観光需要回復に向けた政府の「Go Toキャンペーン」と
復興プロモーション事例をご紹介

新型コロナウィルスの感染拡大によって、外国人旅行客と国内観光客は激減しています。感染防止の具体的な目途が立たない中、観光の需要回復はいつになるのでしょうか。そうした中、政府の「Go Toキャンペーン」を始めとした需要喚起策が始まります。本記事では、売り上げ回復・需要拡大のヒントを得るため、観光客を取り戻すことに成功した2つのプロモーション事例をご紹介します。

観光需要回復はいつ?

新型コロナウィルスの感染拡大によって、激減した外国人旅行客。加えて、日本国内でも緊急事態宣言が全国に拡大され、外出自粛によって域外の移動が大きく制限されています。全国の観光業がかつて経験したことがない苦境に立たされている今、この事態をどのように乗り越えていけばよいのか。過去に起きた2つの危機的状況を参考に、需要回復のタイミングを見ていきましょう。

SARSの事例

まず1つ目が、2002年11月に中国・広東省で発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)です。香港で感染が拡大し、北京や台湾、シンガポール、カナダなどへも広がりを見せました。訪日外客の内、多くを占めていた中国人の数は、2003年3月に発令したWHOのグローバルアラート以降急減。5月には、主な感染地域からの訪日外客数が最も落ち込み、前年比67%の減少を記録しています。終息宣言が出た7月には前年比88%まで回復していますが、元の水準に戻るまでに約5ヶ月かかりました。

東日本大震災の事例

2つ目は、2011年3月に発生した東日本大震災です。特に、発生翌月の訪日外客数は東北地方で82%の減少、日本全体でも前年比63%と、大きく減少。自粛ムードや風評被害によって、各地の観光業に大きな打撃となりました。しかし、その後は徐々に回復を続け、夏休み期間の7月には93%、8月には95%まで戻っています。さらに、9月には前年実績を上回る売上高となりました。東北地方では、しばらく低迷が続いたものの、日本全体でのインバウンド観光拡大は東北地方にも波及し、2015年には震災前の水準まで回復しています。

こうした回復の背景には、外国人旅行客と国内観光客の需要換気を目的とした官民総力をあげての観光復興の取り組みがあります。効果的な情報発信や宿泊旅行推進の各種施策により、自粛ムードは解消。インバウンド観光にもつながり、日本全国の旅行を促進する大きなムーブメントに発展しました。

新型コロナウィルス流行はSARS流行と異なり、日本国内でも複数の感染者が発生しています。また、日本を感染の高リスク国として指定する国も現れています。アジア圏での感染を避ける動きが続く場合には、感染地域外からの訪日外客数も今後大きく減少していく可能性があるでしょう。現時点で、具体的な収束の目処が立てられてないため、インバウンド観光の需要縮小や影響の長期化は覚悟しなければなりません。

まずは国内の需要回復から「Go To キャンペーン」とは

そうした中で、2020年3月に国土交通省で開かれた定例会見では、同年2月の訪日外客数は、108万5100人(前年同月比58.3%減)という発表がありました。これは、東日本大震災直後の2011年4月の同63%に次ぐ大幅な減少です。この観光需要の急減を受け、観光庁の田端浩長官は事態の収束までは「国内での感染(拡大の)防止が最大の支援策」とした上で、日本人の観光需要回復に力を入れる考えを示しています。

これらを踏まえて、政府は事態収束後に地域活性化を目的とした需要喚起策として、官民一体型の需要喚起策「Go To キャンペーン」を予定しています。観光業、運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント業などを対象に事業総額1.7兆円を計上。「Go To Travel」、「Go To Eat」、「Go To Event」という各種施策で需要を促します。

この中で「Go To Travel」は、旅行業者等を経由して、国内の旅行商品を予約することが適用条件とされています。日帰りなら最大1万円、宿泊なら1泊あたり最大2万円相当の補助が適用されます。旅行代金の最大半額が補助され、補助金額のうち7割は旅行代金の割引、残り3割は地域での土産品購入などの現地クーポンとして充当される形です。

今回の施策は過去の旅行促進キャンペーンの中でも最大規模で、地方創生および観光産業の復興に大きな効果が期待できます。しかしながら、あくまでもこれはキャンペーンという位置づけ。一時的な観光需要促進は見込めるものの、長期的に安定的な観光需要を取り戻すためには、観光地域・観光事業者のプロモーション対策が必要です。

完全な復興を待ってからでは、観光客が実際に来るまでにタイムラグが生じます。安全性と快適さは確保しながらも、自社に合ったプロモーション方法を見つけることが重要です。被災した地域の人々が、復興に向けてどのように努力しているかを知ることが、観光の価値になっている事例は多くあります。観光客を取り戻したプロモーション事例を元に、危機を機会に変える方法を検討していきましょう。

観光客を取り戻すプロモーション事例

ここからは先程取り上げた、SARSの主な感染地域とされた香港、そして熊本の事例を見ていきましょう。

SARSからの復興プロモーション事例:香港

香港では、発生からわずか2ヶ月、安全性が確保される前に、安全宣言後のプロモーション戦略を打ち出しました。ターゲットは子供のいない夫婦、独身者を設定し、子供連れについてはSARSが落ち着いてから実施する方針としました。

観光客の心理や、メインターゲットのボリュームを踏まえたプロモーション活動を展開しました。ウェルカム香港プロモーションでは、150以上のショップやレストランが様々な特典を用意。賞品総額2.4億円の大抽選会など、旅行者誘致のための様々な企画を実施しました。

熊本地震からの復興プロモーション事例:別府温泉

次に、国内の復興事例も見てみましょう。

2016年4月に発生した熊本地震は観光業に大きな影響を与えました。人気観光地の別府温泉も例外ではなく、8日間で推定11万人の宿泊キャンセルが発生し、被害総額は13.7億円。ゴールデンウィークも観光需要は戻らず、厳しい状況が続きました。

そんな中、別府市は「大変なときこそ、クスッと笑える広告を」というユニークな視点を取り入れた観光復興PRムービーや新聞広告を展開。県内観光客をターゲットに絞り、目的を明確化したプロモーションで観光客を増やすことに成功しています。さらに、その話題性がSNSで拡散されたことで全国へ広く情報発信することにつながりました。同年12月には前年を上回る奇跡的な観光復興を遂げています。

このように、緊急事態下のプロモーションであっても、ターゲットと目的を明確かつ丁寧に設定したプロモーションを展開できれば、集客促進・消費促進を実現することが可能です。危機を経験した観光地も業界団体や行政、国際機関等の支援を取り付け、活用することでプロモーションに成功するケースも存在します。

完全な復興を待ってからでは、観光客が実際に来るまでにタイムラグが生じます。安全性と快適さは確保しながらも、自社に合ったプロモーション方法を見つけることが重要です。
そのため、「Go To キャンペーン」をきっかけに、観光客・旅行客のニーズの掘り起こし、抜本的なプロモーション施策の再検討してみてはいかがでしょうか。

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